「Doctor’s Four Seasons 2018 Winter vol.49」に掲載されました – メディカルノート事業承継・M&A | クリニック、介護、薬局を中心としたヘルスケアM&Aサービス
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2018.11.05

「Doctor’s Four Seasons 2018 Winter vol.49」に掲載されました

「Doctor’s Four Seasons 2018 Winter Vol.49」に、メディカルノート コンサルティング事業部 長田耕一が執筆するコラムが掲載されました。

 

  

 

 

クリニックM&Aよろず相談所⑥
―譲渡条件決定のメカニズム・その2―

 

前回は、「正しい譲渡条件」というものは存在せず、最終的な譲渡条件への道は売主買主がそれぞれの思惑を抱えながら協議をした結果に到達することを説明しました。とはいえ、タタキ台となる譲渡条件がないと交渉が進みません。今回は、タタキ台を設定する際の基本的な注意点を説明します。

 

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譲渡条件のタタキ台を設定するには、まず「何を譲渡するのか(譲渡資産)」を明確にすることから始まります。当たり前だろうと感じるかもしれませんが、実際には譲渡資産が曖昧なまま譲渡価格だけを決めて話を進めてしまう仲介者も多くいます。
譲渡価格が数十億円となるような案件であれば問題とならない些細なことであっても、小規模案件では大きな影響を及ぼします。仲介者の進め方によっては、長い期間をかけた交渉が最後に譲渡資産の行き違いで破談となることも稀ではありません。簡単なことのようですが、案件に応じて漏れがないよう目配りをするには十分な経験と知識が必要になります。

 

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「敷金は、大家さんから売主にいつ返して貰えるんでしょうかね?」

 

当社が買主側を、別の仲介者が売主側を、それぞれがサポートした案件でのことです。複数の候補者から最終候補者が選定される運びとなりました。
譲渡資産を引継日時点での流動資産・保険積立金・全ての負債が売主の所有、保険積立金と車両以外の固定資産・備品・消耗品は買主の所有と定め、それに対する譲渡金額を提示したところ、当社サポートの買主が最終候補者に残ることができました。
1ヶ月かけたデューデリジェンスが無事に終了したタイミングで仲介者が発した言葉は、選定以降の交渉が全部無駄になりかねないものでした。譲渡代金の数割を占める敷金の扱いは、譲渡代金に大きな影響を及ぼします。そのため、初期段階から口頭で伝え、譲渡条件の提示では貸借対照表を添付して明示していました。
「譲渡金額だけを見ていて譲渡資産はあまり確認をしていなかった」「今さら売主には言えない」「売主が敷金を受け取るという候補者もいた」「何とか譲渡代金を上げてくれないか」譲渡資産の重要性を理解していなかった仲介者は、責任回避に終始するしかありませんでした。

 

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譲渡資産はケースバイケースで、すべてが一律ではありません。既に診療を廃止していて内装のみが譲渡されるケースもあれば、未収金や未払金を含めて医療法人ごと譲渡されるケースもあります。同じ医療法人ごと未収金・未払金を引き継ぐケースでも、譲渡代金以外に理事長への退職金が必要という条件が付けば実質の譲渡資産は変わってきます。
売る側であれ買う側であれ、金額ばかり先走ることなく譲渡資産・条件をよく吟味して検討する必要があります。そして、仲介者にとっては、売主と買主との認識がズレないように交渉を進めることが大切な業務となります。
敷金の件は、売主に当社から直接説明をすることで条件を理解してもらい、そのうえで他条件を再調整することで成立まで漕ぎつけることはできたのですが、とても教訓になった案件でした。